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労働基準監督署の調査とその対応

最近、労働基準監督署による是正勧告件数が増えています。
その要因として、過重労働による労働者の健康障害の防止の為に、長時間労働などを厳しく取り締まりの強化を期待する時代の要請があります。
また、労働者側の権利意識が高まり、申告や内部告発が増えたことが挙げられます。

1.労働基準監督官の権限
労働基準監督官は、労働基準監督官採用試験により採用された、厚生労働省に 所属する国家公務員で、法違反を発見し、または是正させるため、次の権限を もっています。

① 臨検:事業所、寄宿舎その他の付属建設物に立ち入り調査をする権限が あります。(労基法101条1項)
② 提出要求権:帳簿・書類等の物的証拠を提出するよう求める権限があります。 (労基法101条1項)
③ 尋問権:使用者または労働者に証言を求める権限があります。 (労基法101条1項)
④ 即時処分権:安全および衛生基準に違反する付属寄宿舎を即時処分できる 権限があります。(労基法103条)
⑤ 安衛法に基づく作業場環境測定等の検査をする権限があります。(安衛法65条)
⑥ 司法警察官としての権限:労基法などの違反罪について、調書を作成して 検察庁に送付することができる権限があります。
(刑事訴訟法、労基法102条、安衛法92条、最賃法39条、船員法107条)

2.臨検の種類
臨検には、主に次の4パターンがあります。

① 定期監督:最も一般的な調査で、労働行政方針に基づき、労働基準監督署が 任意に調査対象を選択し、定期的に立ち入り調査(臨検)をします。
原則として予告なしで事業所に訪れますが、最近は、より多くの事業場を 臨検する為に、事前に調査日程等を連絡し労働基準監督署に出頭させる ケースが多いです。

② 再監督:定期監督後の検査をする場合があります。

③ 司法警察監督:是正勧告を受けた事業主がその是正勧告に従わない場合に、 強権を発動して行う検査をいいます。
悪質な事業主に対して、逮捕や送検手続がとられるケースもあります。

④ 申告監督:事業場において労基法に違反する事実がある場合、労働者は その事実を労働基準監督官に申告(告訴)することもできます(労基法104条)が、これに基づいて行う調査をいいます。

3.臨検(調査)の内容
労働基準監督官の臨検や事業所調査の目的は、法違反の発見と違反事項の 是正ですが、主として以下のものが挙げられます。

① 労働基準法違反がないか:労働時間管理、残業代等の未払い有無、 労働条件の明示履行等について確認します。
② 労働安全衛生法違反がないか:健康診断の実施状況、過重労働等に ついて確認します。
③ 労働保険料が適正に支払われているか:賃金が正しく集計されているか、 業種が正しいか等について確認します。

4.司法処分について
労働基準監督署が担当する労基法、安衛法等には、法違反に対する罰則規定 (懲役または罰金)が設けられており、重大な法律違反がある場合等には、 労働基準監督官から検察庁に送検(司法処分)されることがあります。

5.調査の結果交付される文書
① 是正勧告書:法違反がある場合
② 指導票:法違反はないが改善が必要な場合
③ 命令書:安衛法その他の違反があり危険な場合に施設設備の使用禁止等を 命令する場合(命令に従わないと6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金
に課されることもあります。)

6. 法違反の事例
平成25年5月10日に東京労働局が発表した『平成24年の定期監督等の実施 結果』によると、定期監督等を実施した事業場の約7割で法違反があったと いうことでした。以下は法違反の事例です。

≪労働基準法違反≫

① 労働基準法第15条違反(労働条件の明示)
労働者を雇い入れる際に、賃金額及び支払方法並びに所定労働時間 などの法定事項について書面を交付していないもの。
また、交付しているが、法定事項が不足しているもの。

② 労働基準法第89条違反(就業規則の作成等)
常時使用する労働者が10人以上いるのに、就業規則の作成・ 届出がないもの

③ 労働基準法第32条違反(労働時間)
時間外労働に関する協定(三六協定)の締結・届出がないのに、 労働者に法定労働時間を超えて時間外労働を行わせているもの。
また、協定の締結・届出はあるものの、その協定で定めた時間外 労働の限度時間を超えて時間外労働を行わせているもの

④ 労働基準法第37条違反(割増賃金)
時間外労働、深夜労働を行わせているのに、法定割増賃金 (通常の賃金の2割5分以上)を支払っていないもの。

なお、平成22年4月1日から、大企業(業種により資本金又は 出資金の規模若しくは労働者数に応じて定められている)については、 1か月60時間を超える残業時間に対して50%以上の割増率で割増賃金を 支払わなければならないこととなっている。

≪労働安全衛生法違反≫

① 労働安全衛生法第10~12、15、17~19条違反(安全衛生管理体制)
常時使用する労働者が50人以上いるのに、衛生管理者を選任 していないもの。

② 労働安全衛生法第20~25条違反
(機械・設備等の危険防止措置に関する安全基準)
高さが2メートル以上の高所において、作業床の端に墜落防止のための手すりを設置することなく、作業を行わせていたもの。

③ 労働安全衛生法第30~31条違反(元方事業者等)
建設工事現場において、元請事業者の労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するための協議組織の設置・運営を行っていないもの。

 ④ 労働安全衛生法第66条違反(健康診断)
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期健康診断を  実施していないもの。

7.調査後の対応

  是正監督署や指導票の内容に従って是正・調査をし、 「是正報告書」といった書面を作成して労働基準監督署へ報告をします。
場当たり的な対応をしてしまうと後々大きな損失へとつながる恐れが あることから、全社的に調査、見直しをし、経営的視点から有効な手段を 検討することが必要となります。

労働基準監督署の調査でお困りの方は、松田社労士事務所に是非ご相談下さい。